今月は麻酔科ローテだ。昨年まわっているのでそこそこ楽かと踏んでいたが、やはり常に神経を尖らせていて全く楽なことはない。
異常な肥満のヒトは、あらゆるところで不利益をこうむることだろう。おいそれと飛行機に乗ることもできない。うちの産婦人科部長は外来ではっきり言っている。
「タバコ吸うのとデブは診ない」
外来でこれを言っているのを聞くと、思わず笑ってしまう。しかし、かく言う部長先生も、妊娠中に急激に太ってしまった妊婦に対して「もう診ない」とは言えないようだ。
先日、帝王切開のオペに麻酔で入ったのだが、なんとその妊婦、120キロ!!!160センチで120キロである。麻酔云々より、オペ室のオペ台に乗れるのかどうか?というレベルである。
そして、帝王切開の場合は、ほとんど腰椎麻酔でやる。横向きに寝てもらって、ちょうど腰骨の高さの脊椎間に針を刺して麻酔する。オペ台の上で横になれるのか?
実際乗ってみると、オペ台で横になれた。それにしても背中の贅肉は凄まじい厚さだ。指で背骨を触ってその間に針を刺さなければならないのだが、いくら探っても厚い贅肉の遥か向こうにある背骨など全く触れるわけもない。もう、勘で刺すしかない。
通常の腰椎麻酔に使う穿刺針は7cmだ。しかしこのヒトに使ったのは9センチ。それでもズブズブ刺さっていく針に手ごたえはない。針がめり込んでもまだ骨に当たらない。
もちろん、局部麻酔をしてから針を刺す。しかし、厚い脂肪の中では局部麻酔もなかなか効かない。何度も穿刺するうちにずいぶん痛がっていたが、それ以上局部麻酔を入れるわけにいかない。
20分ぐらい格闘した挙句、贅肉を2センチほど押し込んでいったところでようやくくも膜下腔に当たった。ようやく麻酔できた。麻酔薬が入ってしまえばもう問題はない。
帝王切開の時は、硬膜外麻酔というのを術後の痛み止めに使うことがある。これは、くも膜下腔よりひとつ手前の層にカテーテルを入れて持続痛み止めを入れる方法だ。しかし、このキット、うちの病院には7センチしかない。このヒトには、術後は坐薬か何かで我慢してもらうしかない。
欧米ではこんなヒトはいくらでもいるのだろう。欧米で麻酔科医になるのは無理だ。
それにしても、これだけ太っていたら、どんな手技をやるのも困難だ。超肥満はロクな医療を受けられないと思う。
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